経営者向け AI実装講座 補助資料

各AIモデルの特徴と、用語。

受講者から必ず聞かれる「結局どれを使えばいいのか」に、数字で答えるための一枚。数字は3か月で腐ります。長持ちするのは 06 の使い分けと 07 の用語、それに 08 の技術メモだけです。08 は受講者に見せる内容ではありません——第9回・第10回で突っ込んだ質問が出たときに、講師が黙らないための分です。

確認日2026-09-12
比較指標Intelligence Index v4.1.1
為替1ドル150円換算
次の更新2026-12月まで
賞味期限の警告。生成AIの主力モデルは月単位で入れ替わります。3か月後にこのページの数字を根拠に判断してはいけません。配布前に各社の公式価格ページで差分を確認してください。この確認作業そのものを受講者の前でやると、そのままAIリテラシーの実演になります。
01

先に結論。3つだけ。

この3つを言えれば、モデル比較の話は終わります。以下の表はすべて、この3つの裏付けです。

CONCLUSION 1

上位4モデルは実質横並び。

総合知能スコアは 63・62・61・61点。差は2点以内です。「一番賢いAI」を選ぶ意味はほぼありません。

CONCLUSION 2

差が出るのは価格のほう。

同世代でも1トークンあたり最大25倍の開き。コストは「どのモデルか」ではなく「どの階層に振り分けるか」で決まります。

CONCLUSION 3

選定軸は性能ではなく既存環境。

Google Workspace なら Gemini、Microsoft 365 なら Copilot、どちらでもなければ ChatGPT か Claude。これで9割決まります。

02

総合知能スコア。

Artificial Analysis の Intelligence Index v4.1.1(9つの評価を合成・すべて最大推論設定)。棒はゼロを基準にした実寸です。上位が団子になっている絵そのものが、この章の結論です。

読み取れること

教材として重要な注意。Gemini 3.1 Pro は旧 v4.0 では 57点で首位でしたが、評価項目が入れ替わった v4.1.1 では 48点です。ネット上には両方の数字が流通しています。比較するときは指標のバージョンを必ず揃えてください。「同じモデルなのに点数が違う記事がある」のは、モデルではなく物差しが変わったからです。
用途別の個別指標。合成スコアとは順位が変わります。エージェント指数は Claude Opus 5 が 55.3 で首位(GPT-5.6 Sol 54.0)。コーディング指数は GPT-5.6 Sol が 80 で首位(Codex harness)。Terminal-Bench v2.1 は Grok 4.6 が 88.4%、Opus 5 が Claude Code 内で 86.7%。
03

API従量課金の単価。

100万トークンあたりのUSD。受講者が直接使う数字ではありませんが、「なぜ階層を分けるとコストが下がるのか」を説明するときの根拠になります。第7回・第9回で使います。

2026年9月12日確認。太字は期限つきの価格。
提供元モデル入力出力文脈長備考
AnthropicClaude Fable 5$10.00$50.00100万最上位
AnthropicClaude Opus 5$5.00$25.00100万2026/7/24
AnthropicClaude Sonnet 5$2.00$10.00100万据置が確定
AnthropicClaude Haiku 4.5$1.00$5.0020万最廉価
OpenAIGPT-5.6 Sol$5.00$30.00105万8/21から3か月間20%超値下げ中
OpenAIGPT-5.6 Terra$2.00$12.00105万7/30に20%値下げ
OpenAIGPT-5.6 Luna$0.20$1.20105万7/30に80%値下げ
GoogleGemini 3.1 Pro$2.00$12.00100万20万超で $4/$18
GoogleGemini 3.7 Flash$0.75$3.75100万導入価格・2026/12/31まで
GoogleGemini 3.5 Flash-Lite$0.30$2.50100万大量処理向け
SpaceXAIGrok 4.6$2.00$6.00—2026/8/12
04

個人向けの月額プラン。

受講者が自分で契約する場合の現実的な選択肢。ここは第11回まで持ち出さないでください——序盤で有料プランを薦めると、講座が営業に見えます。

1ドル150円換算。2026年8月時点の各社公表値。
提供元入門標準上位
ChatGPTGo 約$8(約1,000円)Plus $20(約3,000円)Pro $100 / $200($200は9/10から新規受付停止)
Claude—Pro $20(約3,000円)Max $100 / $200
Gemini(Google AI)Plus 月725円Pro 月2,900円Ultra 月14,500円〜
05

社員10名で使うと、いくらか。

前提:10名 × 1日20回 × 月20営業日=月4,000リクエスト。1回あたり入力2,000/出力800トークン。月間で入力800万・出力320万トークン。

単位:円/月(1ドル150円換算)。サブスクは月3,000円 × 10名。

この表の使いどころに注意。API には画面もアプリも検索機能も付いてきません。社員がチャット画面で使う用途なら、迷わずサブスクです。API従量課金が効くのは、自社ツールに組み込んで大量処理を回す場面に限られます。この区別を伝えないまま表だけ見せると、「サブスクは高い」という誤った結論に着地します。
それでも25倍の差は覚えておく価値があります。社内ツールで全処理を最上位モデルに投げるか、簡単な処理を廉価モデルに振り分けるかで、月額が桁で変わります。第9回で多工程を設計するとき、「この工程は安いモデルでいい」と切り分けられるかどうかが、そのままコストになります。
06

用途別の使い分け。 ← ここだけは長持ちします

モデル名も価格も入れ替わりますが、「この用途にはこの系統」という対応は、この2年ほとんど動いていません。受講者に持ち帰らせるならこの表です。

やりたいこと第一候補根拠
長文の読解・要約・契約書チェックClaude知能指数63点で首位。文脈長100万トークン
大量の資料・PDFをまとめて分析Gemini全モデルが100万トークン。Flash-Lite は $0.30/$2.50 と最安水準
何でも一通り・機能の幅ChatGPT有料プランの GPT-5.6 Sol は知能指数61点(無料・Go は Luna)。画像・音声・エージェントを単一契約で網羅
コーディング・業務自動化Claude / ChatGPTOpus 5 がエージェント指数55.3で首位、GPT-5.6 Sol がコーディング指数80で首位
Office/Windows 中心の職場Copilot単体性能ではなく既存画面での利用。複数社のモデルを切替可能
出典つきで調べるPerplexity回答に出典を併記する設計
自社資料だけを読ませて答えさせるNotebookLMGoogle AI Pro に同梱。社内ナレッジ検索の入口として最も説明しやすい
SNS上のリアルタイム情報GrokX との資本・データ連携。$2/$6 と価格面でも優位
推奨しないもの。DeepSeek・Qwen・GLM などの中国発オープンウェイトは、性能・価格とも優秀です(Kimi K3 は60点)。それでも中小企業に薦める場面は基本ありません。データの扱いを社内・取引先に説明するコストが、節約額に見合わないからです。「性能が低いから」ではない、という言い方をしてください。
法人利用の前提。業務で使うなら、入力データが学習に使われないプラン(Business/Enterprise 相当)を選びます。無料版との決定的な違いで、社内ルール作り(第6回)の出発点になります。この一点だけは、モデルが何回入れ替わっても変わりません。
07

用語。これだけ。

初回に配る用語ミニ辞典(A4 1枚)と同じ内容です。説明は経営者の言葉に寄せてあります。講座中に用語を説明する時間を節約するために配ります。

用語説明
プロンプトAIへの指示文。長さより、前提と条件が入っているかが効く
カスタム指示全部の会話に自動で効く前提設定。会社の自己紹介を毎回書かずに済む
プロジェクト会話と資料をまとめておく箱。案件・業務ごとに分けて使う
専用AI自社の資料と指示をあらかじめ仕込んだAI。本講座ではプロジェクト機能で作ります(無料プランでも使えます)。プロジェクトは個人プランでも社員と共有できます(Free 5人/Go・Plus 10人/Pro 100人)。GPTsは提供終了が告知され、プラグインへ移行中です
ハルシネーションAIがもっともらしい嘘を言うこと。無くならない。前提として設計する
コンテキスト(文脈長)AIが一度に読める情報量。長くなるほど前の話を取りこぼす。上限はトークン数で示される(例:100万トークン)
モデルAIの本体。定期的に入れ替わる。入れ替わると出力の傾向も変わる
トークンAIが文章を数える単位。API利用時の課金の基準。日本語はおおむね1文字1〜2トークン
知能指数(Intelligence Index)複数の試験の点数を合成した、モデルの総合成績。物差しのバージョンが変わると同じモデルでも点が動くので、比較時はバージョンを揃える
API自社のシステムからAIを呼び出す仕組み。社長が触る必要はない。画面は付いてこない
従量課金使った分だけ払う方式。月額固定のサブスクとは別会計。API はこちら
キャッシュ/バッチ同じ前置きを使い回す(キャッシュ・約90%引き)、急がない処理をまとめて出す(バッチ・50%引き)。API のコストを下げる二大手段
オープンウェイトモデルの中身が公開されていて、自社サーバーでも動かせる種類。安いが、運用と説明の責任は自社に来る
推論設定AIにどれだけ考えさせるかの設定。深く考えさせるほど賢くなるが、遅く・高くなる
RAG/ナレッジ検索自社資料を検索させてから答えさせるやり方。第8回で扱う
エージェント複数の工程を続けて実行させる使い方。第9回で扱う
MCP自社のシステムとAIをつなぐための共通の作法。今は名前を知っていれば十分
学習に使われる/使われない入力内容がAIの改善に使われるかどうか。プランと設定で決まる。必ず確認する
ファインチューニングAI自体を自社向けに作り替えること。中小企業では原則不要。本講座では扱わない
評価(eval)AIの答えを採点して品質を測ること。第10回で扱う

全20語。うち知能指数・従量課金・キャッシュ/バッチ・オープンウェイト・推論設定の5語は、このページの数字を説明するために足したものです。受講者に配るA4 1枚は、その5語を除いた15語です。

08

もう一段、技術寄りの話。 ← 講師が知っておく分

ここから先は受講者に説明する内容ではありません。第9回・第10回で突っ込んだ質問が出たときに、講師が黙らないための分です。受講者に話すときは 06 と 07 の言葉に翻訳してください。

8-1 なぜ「同じモデル」なのに答えが変わるのか

8-2 文脈長は「入る量」であって「効く量」ではない

100万トークンと書いてあっても、入れた情報が均等に効くわけではありません。長い入力の真ん中に置いた情報がいちばん拾われにくいという傾向が、複数のモデルで繰り返し観測されています(lost in the middle と呼ばれます)。

8-3 RAG(ナレッジ検索)の中で実際に起きていること

第8回で扱う「自社資料を読ませて答えさせる」は、内部では4段階です。精度が出ないとき、どの段で失敗したかを切り分けられるかどうかが、講師の腕になります。

段やっていることここで失敗すると打ち手
1分割(chunking)資料を数百〜千字の断片に切る表や条文が途中で切れ、意味が壊れるPDFよりテキスト。表はCSVに。見出しを残す
2ベクトル化(embedding)断片を数値の並びに変換する言い回しが違うと似ていないと判定される社内用語と一般語の言い換えを資料に併記する
3検索(retrieval)質問に近い断片を数件だけ拾うそもそも正解の断片が拾われない。ここが最多範囲を絞る/古い版を消す/質問の粒度を揃える
4生成拾った断片だけを見て答えさせる断片に無いことを補って答える(ハルシネーション)「記載がなければ記載がありませんと答える」の1行
切り分けの一手。精度が出ないときは、まず「その質問の答えが書いてある箇所を、資料からコピーして直接貼って」聞き直します。それで正しく答えられたら失敗は3段目(検索)、それでも間違えるなら4段目(生成)。この1手で、資料を疑うか指示文を疑うかが決まります。第8回のつまずき対応は、ほぼこれで足ります。

8-4 「オープンウェイト」は「オープンソース」ではない

8-5 ベンチマークをどこまで信じるか

8-6 MCP と エージェント(第9回で聞かれる分)

8-7 この講座で「やらない」と決めた技術

技術なぜ扱わないか聞かれたときの答え
ファインチューニングデータ整備の工数が中小企業の規模に合わない。モデルが入れ替わるたびにやり直しになる「同じ効果は、資料を読ませる(第8回)と指示文を整える(第2回)でほぼ出ます。順番として先にそちらです」
自社サーバーでのモデル運用GPUの調達と運用の責任が自社に来る「データを外に出さないという目的なら、学習に使われないプランを選ぶほうが安くて確実です」
ベクトルデータベースの自前構築既存サービスのナレッジ機能で足りる規模「精度が出ないのは、たいてい仕組みではなく資料側の問題です(8-3の3段目)」
プロンプトの自動最適化何が効いたか分からなくなり、社内で引き継げなくなる「引き継げない仕組みは、担当が替わった時点で止まります。第5回で仕様書を書くのはそのためです」
この表の使い方。「やらない」を即答できることが、講師の信頼をいちばん作ります。知らないから扱わない、ではなく、規模に合わないから扱わない——その理由が言えるかどうかです。受講者が持ってくる「AI導入」の提案書には、この4つがよく入っています。
09

どれくらいの速さで古くなるか。

2026年6月30日から8月21日までの8週間で7件。この年表そのものが「ネットの比較記事を信じるな」の証拠になります。

2026年8月下旬までに確認できた動き。9月以降の発表は未反映の可能性があります。
日付できごと影響
6/30Claude Sonnet 5 リリース$2/$10 で Opus 4.8 級
7/9GPT-5.6(Sol/Terra/Luna)一般提供3階層への再編
7/24Claude Opus 5 リリース知能指数で首位交代
7/30OpenAI が Luna を80%値下げ階層間の価格差が5倍→25倍に
8/12Grok 4.6 リリース知能指数が56→61に
8/13Gemini 3.7 Flash リリース3.6 Flash の23日後
8/21OpenAI が GPT-5.6 Sol を20%超値下げ3か月間の期間限定
講座での使い方。資料を配るだけで終わらせず、受講者の前で各社の公式価格ページを開いて数字を確かめるところまでやってください。「ネットの比較記事は3か月で腐る/一次情報に当たる」という習慣は、技術知識よりずっと長く役に立ちます。第1回のデモ枠、または第11回の投資判断の回に差し込むのが自然です。
10

この数字を作り直すとき。

3か月ごとに更新します。手順は5つです。

更新しないまま3か月を超えたら、受講者に見せないでください。古い数字を配ることは、この講座が一番やってはいけないことです。