このエリアの正体は「新千歳空港から1時間以内に、火山・湖・海・温泉・アイヌ文化・工業地帯が全部ある」ことです。観光地として名前が立っていないぶん、混みません。空港でレンタカーを借りて西へ流し、翌日そのまま戻ってくる——往復しない一本道の組み方が、この土地にはいちばん効きます。
この土地の骨格は火山です。約4.4万年前の巨大噴火でできた支笏カルデラに水が溜まったのが支笏湖、そのカルデラの縁に生まれた新しい火山が樽前山。そして樽前山が繰り返し降らせた火山灰の平野が、いまの苫小牧の市街地と港になっています。湖・山・街は、同じ噴火の産物です。
| 時刻 | 行き先 | メモ |
|---|---|---|
| 10:00 | 新千歳空港着・レンタカー | 受付〜出発で40〜60分みておく。空港の混雑期は特に |
| 11:00 | 支笏湖へ(国道453号 約40分) | 道中はほぼ森。コンビニは空港周辺で最後 |
| 11:20 | 支笏湖・湖畔散策 | ビジターセンター(無料)→ 山線鉄橋 → 湖畔。水中遊覧船に乗るならここで |
| 12:30 | 昼:ヒメマス or 支笏湖チップ | 湖畔の食堂。ヒメマスは支笏湖の看板。夏〜秋が旬 |
| 13:40 | 樽前山7合目ヒュッテ(約30分) | 東山まで往復1時間半ほど。行かない場合も7合目からの支笏湖の眺めだけで価値があります |
| 16:00 | 苫小牧市街へ(約40分) | 山を降りると、いきなり工業都市に出ます。この落差がこの日の山場 |
| 17:00 | 苫小牧港・キラキラ公園 | フェリーと貨物船。日没前の30分に着けると空と海がいちばん良い |
| 18:00 | 夕食:ホッキ | 苫小牧はホッキ貝の水揚げ日本一。ホッキカレー、ホッキ刺し、ホッキ丼 |
| 19:00 | 工場夜景 | 製紙工場(王子町)と製油所(沼ノ端側)。性格が違うので2ヶ所回る価値があります |
| 20:00 | 登別温泉へ(約45分) | 高速で一本。夜の運転が入るので、ここだけは無理をしない |
約4.4万年前の巨大噴火でできた支笏カルデラに水が溜まった湖。最大水深363mは田沢湖に次ぐ日本第2位、平均水深265m。貯水量は約20.9km³で琵琶湖に次ぐ日本第2位——面積は琵琶湖の1割ちょっとなのに、水の量は互角に近い。ものすごく深いのがこの湖の正体です。
標高1,041m。外輪山・中央火口丘・溶岩ドームが入れ子になった三重式火山で、山頂にそびえる溶岩ドームは1909年の噴火でできた高さ134mの塊です。7合目まで車で上がれるので、北海道の火山としては例外的に手軽に山頂へ立てます。
苫小牧港は1951年着工・1963年に第1船が入港した世界初の内陸掘込式港湾です。砂浜を内陸へ掘り込んで港をつくるという発想で、土木学会選奨土木遺産に選ばれています。取扱貨物量は全国4位、内航貨物では全国1位。大洗・仙台・名古屋・秋田・新潟・敦賀へのフェリーが出ています。
苫小牧はホッキ貝の水揚げ量が日本一で、市の貝にも指定されています。名物はホッキカレー。苫小牧漁港のそばにある食堂で生まれた組み合わせで、いまは市内の複数店が独自版を出しています。
地獄谷は日和山の噴火でできた爆裂火口の跡で、直径約450m。谷全体から1日約1万トンの湯が湧き、これが登別温泉街の湯量を支えています。入場は無料、遊歩道が整備されていて30分ほどで一周できます。駐車場は有料(165台)。
| 時刻 | 行き先 | メモ |
|---|---|---|
| 08:00 | 登別地獄谷 | 無料・一周30分。朝いちばんは湯気の量が段違い。宿から徒歩圏 |
| 09:30 | 白老へ(約25分) | 高速なら15分ほど。海沿いの国道36号でも同じくらい |
| 10:00 | ウポポイ(民族共生象徴空間) | 大人1,200円。国立アイヌ民族博物館+国立民族共生公園。最低2時間、できれば3時間 |
| 12:30 | 昼:白老牛 or 虎杖浜たらこ | 白老は白老牛のブランド地。虎杖浜のたらこは土産にも強い |
| 14:00 | ウトナイ湖へ(約40分) | 道の駅ウトナイ湖が隣接。トイレ・土産・展望が一度に済む |
| 14:30 | ウトナイ湖 | 野生鳥獣保護センター(無料)。渡り鳥の中継地で、春秋は水鳥が多い |
| 15:30 | ノーザンホースパーク(約25分) | 空港から車15分。返却前の最後の1時間にちょうど収まります |
| 17:00 | レンタカー返却 → 新千歳空港 | 返却は出発時刻の2時間前を目安に。給油の時間も忘れずに |
2020年7月12日開業。名称の「ウポポイ」はアイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」を意味します。国立アイヌ民族博物館・国立民族共生公園・慰霊施設の3つで構成される国立の施設で、白老町のポロト湖畔にあります。入場料は大人1,200円・高校生600円・中学生以下無料。
1991年、日本で4番目のラムサール条約登録湿地になりました。渡り鳥の中継地で、ハクチョウやガン・カモ類が春と秋に大量に立ち寄ります。野生鳥獣保護センターは無料、隣に道の駅があり、空港まで15分という立地です。
苫小牧市美沢、新千歳空港から車で約15分。駐車場500台が無料で、空港から無料送迎バスも出ています(4〜11月は10:30/12:30/14:30発など)。引退した競走馬に会える観光牧場で、飛行機の時間まで中途半端に余った1〜2時間を埋めるのに、この立地はかなり強い。
ホッキ貝(苫小牧):水揚げ日本一。ホッキカレーが名物で、刺身・丼・フライも。これは苫小牧でしか濃度が出ません。
ヒメマス/チップ(支笏湖):湖の看板。刺身・塩焼き・フライ。1日目の昼はこれで確定でいいと思います。
白老牛(白老):ウポポイのすぐそば。昼に食べるならステーキよりハンバーグのほうが時間も財布も収まります。
虎杖浜たらこ(白老):登別〜白老の海沿い。土産で強いのはこれ。保冷を考えると帰りがけに買うのが正解です。
本ししゃも(むかわ):10〜11月限定。世界で北海道の太平洋岸の一部にしかいない日本固有種で、スーパーで売っている「ししゃも」の多くは別種のカラフトシシャモです。時期が合うなら、これがこのエリアで最も替えの効かない一品。
巨大噴火が支笏火砕流と降下軽石を噴出し、陥没したカルデラに水が溜まって支笏湖ができた。いまの地形はここから始まります
火砕流が山麓へ流れ下り、苫小牧の降灰は1〜2m、灰は十勝平野から道東まで達した。市街地の地面は、この灰の上にあります
7月14〜26日の噴火。降灰で昼が夜のようになったと記録され、この活動で山頂のカルデラができた
1867年の噴火で山頂火口内に溶岩ドームが生成。さらに1909年の噴火で中央火口内に高さ134mの溶岩ドームができ、これが現在の樽前山の姿になった
豊富な水と木材、そして支笏湖からの水力。製紙の街としての苫小牧はここから始まる。工場と鉄道が街の骨格をつくった
1951年起工、1963年に第1船が入港。天然の良港がない砂浜海岸を内陸へ掘り込むという世界初の内陸掘込式港湾で、土木学会選奨土木遺産。現在は取扱貨物量 全国4位、内航では全国1位
日本で4番目の登録湿地。渡り鳥の中継地としての価値が国際的に認められた
アイヌ民族が法律上はじめて「先住民族」と明記された。ウポポイはこの法律を背景に整備された国立施設です
白老町ポロト湖畔に国立アイヌ民族博物館が開館。先住民族をテーマとした日本初の国立博物館で、展示はアイヌ自身の一人称「私たち」で語られる
| 項目 | 大人料金 | 所要の目安 | 時間の制約 |
|---|---|---|---|
| ウポポイ | 1,200円 | 2〜3時間 | 月曜休園/入園は閉園1時間前まで |
| 支笏湖ビジターセンター | 無料 | 30分 | 季節で時間変動 |
| 支笏湖 水中遊覧船 | 1,700円前後 | 30分 | 冬期運休・荒天欠航 |
| 樽前山 7合目〜東山 | 無料 | 往復1時間半 | 噴火警戒レベルで規制/冬期閉鎖 |
| 登別地獄谷 | 無料 | 30〜45分 | 駐車場は有料(165台) |
| ウトナイ湖・野生鳥獣保護センター | 無料 | 30分 | — |
| ノーザンホースパーク | 入場有料(季節変動) | 1〜2時間 | 駐車無料・空港送迎バスあり |
| レンタカー(1泊2日) | 1万円前後+燃料 | — | 走行は2日で200〜250kmほど |
| 入場・レンタカーの合計(目安) | 1.5万〜2万円/2人(食事・宿泊を除く) | ||
距離の感覚をつかんでおくと組み替えが楽になります。空港→支笏湖 約40分/支笏湖→樽前山7合目 約30分/樽前山→苫小牧 約40分/苫小牧→登別 約45分/登別→白老 約25分/白老→ウトナイ湖 約40分/ウトナイ湖→空港 約15分。どの区間も1時間を超えません——これがこのエリアの最大の武器です。
| よく聞く話 | 判定 | 実際は |
|---|---|---|
| 支笏湖は日本一深い湖 | ✕ 誤り | 最大水深363mで日本第2位。1位は田沢湖(423m)。ただし貯水量も第2位(1位は琵琶湖)で、「深さも水量も2位」という珍しい湖です |
| 支笏湖は北海道なのに凍らない | ◯ 本当 | 日本最北の不凍湖。深部に残る温かい水が水面を温め続けるため凍りにくい |
| 樽前山は7合目まで車で行ける | ◯ 本当 | ただし噴火警戒レベルによって規制、冬期は道路閉鎖。前日確認が必須 |
| 苫小牧港は自然の入り江を利用した港 | ✕ 誤り | 逆です。砂浜海岸を内陸へ掘り込んでつくった世界初の掘込式港湾。良港がなかったから掘った |
| 工場夜景は工場敷地に入って見る | ✕ 危険・不可 | 稼働中の施設です。公道の指定スポットから見る。路上駐車もしないこと |
| ウポポイは「テーマパーク」 | ✕ 誤り | 国立博物館+国立公園です。先住民族をテーマにした日本初の国立博物館で、展示はアイヌ自身の一人称で書かれています |
| スーパーの「ししゃも」は本物 | ✕ 多くは別種 | 流通の大半はカラフトシシャモ(カペリン)。本ししゃもは北海道太平洋岸の一部だけの日本固有種で、漁期は10〜11月 |
| 登別は硫黄泉の温泉地 | △ 一面だけ | 9種類の泉質が同じ谷から湧く「温泉のデパート」。宿ごとに引いている湯が違います |
| このエリアは電車とバスで回れる | △ 半分だけ | 白老・登別・苫小牧はJRで行けますが、支笏湖・樽前山・ウトナイ湖は車がないと厳しい |
| ホッキ貝は北海道じゅうの名物 | △ 苫小牧が突出 | 水揚げ量日本一は苫小牧で、市の貝にも指定。ホッキカレーはこの街の発明です |